世界記録保持者に学ぶ中距離ランナーの暑熱プロトコル

写真: Jan Figueroa、Joe Hale

編集部より: 2026年現在、ランナーの暑熱トレーニング導入は他の持久系競技に比べて遅れています。アトランタ・トラッククラブ・エリートのトム・ノヒリーのような先進的なコーチたちは、プロランニングにおける暑熱トレーニング特有の課題と可能性に取り組んでいます。

本プロトコルの執筆者は、ノヒリーが指導するアトランタ・トラッククラブ・エリート/アディダス所属のプロ中距離ランナー、ショーン・ドーラン。4×800mリレー(ショートトラック)で世界記録樹立に貢献し、世界室内陸上選手権の800mでトップ10入り。マイル3分55秒52、800m1分45秒41の自己ベストを持ちます。ヴィラノヴァ大学で複数回のオールアメリカン、ビッグイースト王者に輝いた後、プロ2年目を迎えています。

中距離種目(800m/1500m)のトレーニングにはさまざまなアプローチがあります。走行距離を抑えてスピードとパワーを重視するスタイルもあれば、距離を多く踏みつつ計算されたハードなインターバルを組み込むスタイル、その両方を組み合わせる考え方もあります。異なるアプローチのアスリートが同じような結果にたどり着けるのが、この種目の面白さです。

ここで紹介する暑熱プロトコルは、私が2026年室内シーズンに向けた秋の強化期に実際に使ったものとほぼ同じで、その過程で得た学びも盛り込んでいます。新しい刺激をトレーニングに加えるのはいつも不安が伴いますが、フィジカル・有酸素能力・メンタルのすべてでプラスの効果を実感しました。競技のあらゆる側面で向上を感じられるのは刺激的で、中距離選手のための暑熱トレーニングをこれからも探求していきたいと思っています。

ショーン・ドーラン

暑熱トレーニングを始めた理由

始めたきっかけは、中距離ランナーにとって本当に効果があるのかを確かめたかったからです。トレーニング週の構成の中でどう実践に落とし込めるのかにも興味がありました。海抜ゼロ地帯で生活・練習する身として、平地にいながら高地トレーニングに近い代謝面の効果を得られるのかも知りたかった。2025年10月にこの取り組みを始めたとき、これらはすべて未知数でした。

どう実践したか

コーチのトム・ノヒリーと私は、今季の暑熱トレーニング導入にあたり一つのルールを決めました。「その週の他のセッションに影響を与えないこと」。新しい負荷を、週のトレーニングにマイナスを生まない形で組み込む方法を探る必要がありました。

リカバリー日を暑熱トレーニングに充てる

週のリカバリー日を暑熱トレーニングの機会として活用することが多くありました。たとえば水曜の朝、トレッドミルでイージーなディスタンス走を行います。前日のトレーニングから回復するために必要なだけペースを落として走ります。屋外で走るのに比べ、トレッドミルでは皮膚温と深部体温を高く保てます。

走り終えたら乾いたウェアとCOREヒートトレーニングスーツに着替え、すぐにスピンバイクに乗ります。30〜40分こいで、トレッドミルで作った熱を維持します。こうすることで、体への物理的・有酸素的な負担を増やしすぎることなく、その日の目標とする暑熱トレーニング負荷(Heat Training Load)まで積み上げられます。

「回復」というその日の目的を守りながら、暑熱面の効果を伸ばす。この「コンボセッション」は暑熱適応を高めるのに有効でした。最初の数回はきつかったものの、何事も同じで、回数を重ねるほど楽になっていきました。

これらのセッションでの目標は暑熱トレーニング負荷3.0〜6.0。コンボセッションではこのレンジの上限寄り、バイクのみの純粋な暑熱セッションでは下限寄りを狙います。運動中のヒートストレインインデックス(HSI)は最大4.5を上限としました。これを超えると翌日のトレーニングに支障が出ることが分かったからです。

1か月で「ヒートチャンピオン」に

適応期には、この強度の暑熱トレーニングを週2〜3回行うことで、順化スコアがかなり速く伸びました。このプロトコルを始めて1か月以内に「ヒートチャンピオン」(順化率90%超)に到達できました。

その後3か月以上ヒートチャンピオンを維持。適応を保つため週2〜3回の暑熱セッションは続けつつ、HTLは4.0以下に抑えました。HSIの上限もやや低い3.5〜3.8のレンジに。そして10日に1回は、HTL7.0〜8.0のやや大きめの暑熱セッションを入れて体に刺激を与えました。「低負荷」期でも刺激を確実に残すためです。

暑熱順化スコアの推移

その他の有効な選択肢

中距離ランナーの暑熱トレーニングには複数のやり方があります。トレーニングスタイルが多様であるのと同じく、刺激への反応も人それぞれです。私は暑熱トレーニングの大半をクロストレーニングで行いました。自分の週の構成に組み込むには、それが最も効果的だったからです。

他にも、重ね着してのトレッドミル走、1日で最も暑い時間帯に重ね着して走る、別の形の「コンボセッション」など。いずれも試しましたが、週の重要な練習を軸にその周りへ組み込むのが最も効果的でした。

もう一つの選択肢が「パッシブ(受動的)暑熱トレーニング」。サウナ、スチームルーム、温浴などです。通常のトレーニング以外で暑熱適応を高める優れた方法です。私は高地滞在中、レースに向けて適応の維持期にあったため、パッシブ暑熱トレーニングを多めに使いました。暑熱セッションの直後にパッシブ暑熱を加えるのが、セッションの効果を最大化する一番の方法です。

例: 重ね着で60分のクロストレーニング+仕上げにサウナ10〜20分。

高地での暑熱トレーニング

高地でのトレーニングブロック中も、暑熱面の効果は維持できました。アリゾナ州フラッグスタッフに到着した時点で暑熱順化スコアは90%台半ば。調整したのは、アクティブな暑熱トレーニングを週2〜3回から最大週2回に減らしたことだけです。このブロックは室内シーズンに向けた仕上げ期で、クロストレーニングの割合も減らしていました。

オーバートレーニングを避けるため、この期間の順化維持は主にパッシブ暑熱トレーニングに頼りました。週3〜4回、1回15〜20分のドライサウナを実施。うち週1回はコンボセッションの最後に組み込みました。高地でもパッシブ暑熱トレーニングの導入によって90%超の暑熱順化を維持できました。

得られた効果

暑熱トレーニングを始めてから、フィジカル・有酸素能力・メンタルのすべてで良い変化を感じています。身体面では、以前よりも回復がずっと速くなった実感があります。体温が高い状態を作ることで、全身の血流が安定して良くなりました。トレーニングブロックとしては過去最も安定しており、大きなトレーニング負荷を抱えながらこれほど調子が良かったことはありません。

この最初のブロックでは有酸素面でも大きな伸びがありました。練習でペースが上がっても心拍数は低めに推移し、どのセッションでも乳酸の目標範囲内でより追い込めるようになりました。トラックでのハードなインターバルでも、身体的にも有酸素的にも強さを感じました。

秋の強化期のこの時点としては、回復の質はこれまでで最高でした。暑熱トレーニングがくれたメンタル面の刺激も気に入っています。「不快であることに慣れる」ことを教えてくれました。週に何度も自分を不快な環境に置くことで、精神的に強くなれた。暑熱トレーニングの不快さを楽しめるようになり、最後にはもう一本イージーランに出るような感覚にさえなりました。

Train Hot, Race Cool

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