Sweatlabs: 暑熱適応は暑さでの糖質消費を減らせるか?
持久系運動中、体は暑熱下では温和な条件に比べて10〜20%多くの糖質を消費します。一方で、暑熱順化したアスリートにはこの糖質消費の増加が起こらないことを示すエビデンスがあります。研究「4週間の暑熱順化は、暑熱下の最大下運動における訓練されたランナーの糖質酸化を低下させる」は、その考えを裏づける新たな証拠を示しました。

主な知見
- 暑熱下では、暑熱順化したランナーの糖質酸化は未順化のランナーより15〜19%低かった。運動強度はVO2maxの75〜85%(低強度ほど減少幅が大きかった)。
- 暑熱下走行時、暑熱順化したランナーは換気性作業閾値1(VT1)での速度が4%向上した。この有酸素閾値は、体が主に脂質利用から糖質依存の増加へ移行する境界にあたる。
- 4週間の暑熱順化後、ランナーは血漿量の増加(4%)、ヘモグロビンの増加(2%)、テストステロンの増加(18%)も示した。さらに暑熱下走行時に深部体温の低下(0.4°C)、発汗率の増加(21%)、乳酸除去率の増加(19%)、ランニングエコノミーの改善(6%)が見られた。
研究の方法
- よく訓練された(VO2max約62 mL/min/kg)中長距離ランナー18名を、対照群と暑熱順化群に分けた。対照群は通常のトレーニングを行い、暑熱順化群は週5回の暑熱セッションを4週間実施(各暑熱セッションの運動強度は、対照群のセッションの主観的運動強度(RPE)に合わせて調整)。
- プロトコルの前後に、漸増式トレッドミルテストと暑熱下ランニングエコノミーテストを実施。条件は30°C・高湿度。
- 生理指標は標準的な実験室手法で測定。暑熱セッションとトレッドミルテスト中の深部体温はCOREセンサーで計測した。
COREの見解(Hot Take)
暑熱下走行時、暑熱順化群は対照群より1時間あたり36グラム少ない糖質しか使いませんでした。アマチュアアスリートは持久系イベント中に毎時60〜90gを摂取するため、暑熱順化は暑いレースでの糖質依存を大幅に減らすことを意味します。
暑いレースは、未順化アスリートにとって三重の補給の悪夢です。
- 暑さのために体はより多くの糖質を必要とする。
- 深部体温が高いために、摂取した糖質のうち血糖に変換される割合が下がる。
- 冷却のため血液が消化管から皮膚へ回され、消化器系の燃料処理能力が下がる(これが胃腸障害の原因!)。
暑熱順化したアスリートは、この3つの問題すべてにうまく対処できます。
- 糖質を増やす必要がない。
- 深部体温が低く保たれるため、消化器系の効率が維持される。
- 消化管から皮膚へ回される血液が少なく、より多くの燃料を受け付けられる。
本研究の条件は非常に高温で、運動強度は訓練されたアスリートのマラソンペースに相当します。より涼しい条件や低強度であれば、糖質消費の減少幅はより小さくなる可能性が高いでしょう。
糖質消費が減る根本的なメカニズムは、換気性閾値の向上に示されるとおり、有酸素能力の向上にあると見られます。これにより筋への酸素供給が効率化し、筋グリコーゲンの必要性が下がります。つまり暑熱トレーニングは、涼しい条件や低強度でも糖質消費を減らす可能性が高いということです。

今後に向けて
暑熱下で糖質消費が増えるメカニズムはよく理解されているようです。同様に、暑熱順化したアスリートが暑熱下で追加の糖質を必要としない理由も明らかに思えます。
ただし、温和な条件や低強度の場面での、暑熱順化アスリートの糖質消費については疑問が残ります。未順化アスリートより少なく消費する可能性は高そうですが、さらなる研究が必要です。
見てみたい研究は次の通りです。
- 暑熱順化アスリートが未順化アスリートより糖質を少なく使う、最も低い環境温度は何度か。
- 暑熱順化アスリートが未順化アスリートより糖質を少なく使う、最も低い強度閾値(VO2maxの何%)はどこか。言い換えれば、ウルトラ走やエイジグルーパーのアイアンマンにも当てはまるのか。
- 暑熱順化レベル・運動強度・環境条件から糖質消費を予測するモデルを構築できるか。
この記事は本国CORE(greenteg社)のSweatlabsシリーズを日本語化したものです。
