史上最も暑いワールドカップ:FIFAレフェリーのCOREデータを読み解く

史上最も暑いワールドカップが今月閉幕しました。選手やファンの耐久力が試された大会でしたが、その裏で、しばしば忘れられがちな存在——レフェリーもまた、過酷な条件と戦っていました。

北米の夏の酷暑に備え、FIFAレフェリーのイルギズ・タンタシェフ氏は、フィットネス&パフォーマンスコーチのワディム・チェレパノフ氏とともにCOREと連携。大会に向けた暑熱順化プロトコルを実施し、試合中も熱に関するバイタルをライブでモニタリングして、危険な熱ストレスのレベルを回避しました。

「これまで、熱に関する安全管理は気温や湿度といった環境要因のモニタリングに限られていました」とCOREのCCO、ロス・マグロウは説明します。「この連携により、FIFAのレフェリーは個人単位のモニタリングという武器を手にし、自分の身体の中で実際に何が起きているかを見られるようになりました」

暑熱順化

タンタシェフ氏は8週間の暑熱順化プロトコルを実施。厚着でのトレッドミルやバイクトレーナーによる屋内セッションを複数回行いました。各セッションの目的は、血漿量の増加や同一負荷での心拍低下といった適応が起こるレベルまで熱ストレインを高めることです。

心拍計ストラップに装着したCOREセンサーで熱バイタルを追跡し、正しく安全な暑熱曝露量を確保。COREアプリで大会までの適応の進捗を追い、最終的に暑熱順化スコア81%に到達しました。

試合中のライブデータ

COREセンサーをGarminウォッチとペアリングし、各試合・ハーフタイム・給水タイムを通じて深部体温、皮膚温、ヒートゾーン、各ゾーンの滞在時間をライブでモニタリング。リアルタイムでデータを見られたことで、水をかける、給水する、クーリングタオルを使うといった冷却戦略の効果をその場で確認し、調整することができました。

試合データに見られたパターン

3試合すべてで、HSI(ヒートストレインインデックス、深部体温と皮膚温を組み合わせ、身体が自らを冷やすためにどれだけ働いているかを0〜10で示す指標)に共通のパターンが見られました。前半を通じて着実に上昇し、ハーフタイムでピーク。休憩と給水で大きく低下し、後半に再び着実に上昇します。

興味深いのは、HSIのピークが試合終盤ではなく前半終了時に来ている点です。前半のほうが試合のテンポが速いこと、そして日没に向けて気温が下がっていったことが要因と考えられます。

厳しい気温と湿度にもかかわらず、タンタシェフ氏はヒートゾーン4に一度も入りませんでした。暑熱トレーニングが適切な適応をもたらし、極端な条件を安全に乗り切れたことを示しています。

熱ストレインと認知機能

3試合のうち2試合では、HSIが6/10を超え、最大深部体温は39.2°Cに達しました。身体面だけでなく認知面のパフォーマンスにも明確な低下があったと考えられます。HSIが上がると、身体は冷却を優先して筋肉と脳から皮膚へ血流を振り向けるため、集中力の維持と難しい判断が極めて困難になります。

気温38°Cに達したフランス対パラグアイ戦を裁いた後、タンタシェフ氏は判定の質や規律適用の偏りについて厳しい批判を受けました。高い熱ストレインが、一瞬の判断の乱れに寄与した可能性があります。

2024年9月のPlakiasらの研究「サッカー選手の健康とパフォーマンスに対する暑熱曝露の影響」もこの点に触れています。「高い暑熱曝露は中枢神経系に影響しうる。視知覚、注意、予測、記憶といった脳機能は意思決定に不可欠であり、正しい戦術的行動の遂行に必要である……サッカー選手の脱水は、最適なパスを選択する際の誤選択率を高めた」

給水タイムの効果

今大会から導入された給水タイムの効果も、データにはっきり表れています。暑かった2試合では、休憩の前後で熱ストレインが一時的に低下、あるいは横ばいになった後、再び上昇しています。試合全体の強い熱ストレインの中では小さな変化に見えますが、対照データがないため、休憩がなければどこまで上昇していたかはわかりません。

比較的涼しかった試合では、影響はさらに顕著でした。最初の給水タイム後、熱ストレインは約20分間、休憩前のピークを下回ったままでした。

運動量だけでは熱ストレインは予測できない

総走行距離とHSIを比較すると、運動量だけでは熱ストレインを予測できないことがわかります。スコットランド対モロッコ戦でタンタシェフ氏は最も長い距離を走りましたが、環境条件が最も涼しかったため、HSIは最も低くとどまりました。この3試合では、運動量より気温のほうが熱ストレインへの影響が大きかったのです。

これは他競技でも常に同じとは限りません。ツール・ド・フランスのワールドツアー選手のデータでは、気温と熱ストレインの相関はそこまで強くなく、運動量、走行風による対流、冷却戦略などが大きな役割を果たしていました。

試合のテンポを速める新ルールの影響

熱ストレインをさらに強めているのが、8秒ルール(ゴールキーパー)、リスタートの高速化、時間稼ぎの取り締まりといった新ルールです。

Experimental Psychology誌の論説「サッカーを速くすることの隠れた暑熱ペナルティ」はこう説明します。エリートの試合ではボールがインプレーである時間は従来60%弱で、暑熱下では選手が停止時間を引き延ばすことで50%近くまで下がることもあった。しかし新ルールはこれを防ぐため、暑熱下でも約70%になると見込まれる。90分の試合では15〜20分多く走ることになり、総仕事量はおよそ25%増、結果として産熱も増える——。

これから

世界の気温が上昇し続ける中、熱データは選手やレフェリーの安全とパフォーマンスを守るうえで、ますます重要な役割を担っていきます。個別化されたライブモニタリングは、環境からの入力が体内でどう現れているかを、これまで不可能だった形で明らかにします。

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