暑熱トレーニング vs
高地トレーニング

適応の共通点と違い。暑熱は高地の代わりになるのか——スポーツ科学者ルーカス・シェール氏が解説します。

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「暑熱トレーニングで高地レースに備えられるか」「暑熱トレーニングは高地合宿への移行を楽にするか」——COREによく寄せられるこの2つの問いに、高地でエリート選手を研究してきたスポーツ科学者ルーカス・シェール氏が答えます。

それぞれの効果

高地トレーニングが持久系競技に有益であることは数十年前から知られています。高地だけでなく海面レベルでの競技にも効果があり、主要な生理的適応は総ヘモグロビン量(Hbmass)の増加、それに伴う最大酸素摂取量(VO2max)の向上です。ただし数週間高地に滞在するには相当な労力と費用がかかり、事実上エリート選手に限られます。

近年、暑熱トレーニングにも多様な有益な適応があることを示す研究が増えています。暑い環境での競技だけでなく、温暖な条件でも効果があり、血漿量と総血液量の増加、発汗率の上昇、そして高地と同様にヘモグロビン量の増加が含まれます。しかも、はるかに安価で、どこにいても比較的簡単に実施できます。

暑熱は高地の代わりになるか

高地の場合: 身体は酸素利用可能量の低下を感知し、EPOの発現を増やして赤血球とヘモグロビンの産生を促します。文献によれば、3〜4週間の高地合宿でHbmassは平均3〜7%増加(高地滞在100時間あたり平均1.1%増)。選手のベースライン次第で、およそ20〜70gの増加に相当します。Hbmassは最大酸素摂取量に直接影響し、Hbが1g増えると絶対VO2maxが4mL増加します。さらに換気能力、毛細血管密度、ミトコンドリアの数と効率、筋の緩衝能も改善します。

暑熱の場合: 3〜5週間の定期的な暑熱トレーニングでHbmassは平均2〜4.5%増加(高地よりわずかに少ない程度)。加えて血漿量・総血液量・発汗率・暑熱耐性の向上、体温調節と皮膚血流の改善、暑い条件でも温暖な条件でも運動中の深部体温と心拍数の低下が見られます。VO2max、乳酸性閾値でのパワー出力、タイムトライアル成績の改善を示した研究も複数あります。

血液系の変化には共通点があるため、暑熱トレーニングは「貧者の高地トレーニング」と呼ばれることもあります。ただし、どちらか一方が他方の完全な代替になるわけではありません。それぞれ固有の適応をもたらすためです。世界のトップ持久系選手を見ても、高地と暑熱の両方を定期的に行っており、どちらか一方だけということはありません。

高地でのレースに向けた準備として

White ら(2016年)の研究では、暑熱トレーニング後の高地でのVO2maxに差は見られませんでしたが、16kmタイムトライアルで平均28秒わずかに良い成績が出ました。血漿量の増加による血液粘度の低下と心効率の改善も、低酸素下での持久パフォーマンスに好影響を与えうる要素です。

高地トレーニングへの準備として

Willmott ら(2024年)の系統的レビューによれば、暑熱ストレスから低酸素への「クロス適応」により、安静時・最大下運動時の酸素飽和度の上昇と心拍数の低下、換気・ピークパワー・タイムトライアル成績へのわずかな効果が期待できます。

これはコーチや選手の実感とも一致します。高地合宿の前の数週間に暑熱トレーニングを行い、高地到着後の順応期間を短縮するという使い方です。高地滞在の初日は調子が上がらず練習も限られるため、この移行をスムーズにできれば合宿全体の質が上がります。

暑熱と高地を組み合わせたプロトコル例
  1. 自宅にいるうちに、週3〜5回の暑熱セッションを数週間(5週間以上を推奨)。総血液量・血漿量・ヘモグロビン量を増やします。
  2. 高地順応は依然として強く推奨されます。換気、緩衝能、毛細血管・ミトコンドリア密度など、低酸素でしか引き起こされない適応があるためです。
  3. 低酸素への順応後、高地での競技・パフォーマンスに最適な状態が整います。

高地で得た適応を維持する

Rønnestad ら(2024年)の研究では、海面レベルに戻った後に週3回の暑熱セッションを行うことで、高地トレーニングで得たHbmassの増加を3.5週間維持できました。一方、対照群は同時点で適応の75%を失っていました。さらに暑熱トレーニング群では血漿量が11.6%、総血液量が5.8%増加しました。

まとめ

暑熱と高地のトレーニングは、特に総ヘモグロビン量に関して類似した効果を持ちます。それぞれの環境(高地・暑熱)でも、海面レベルや温暖な条件でも、持久パフォーマンスに好影響を与えることが示されています。暑熱トレーニングの大きな利点は、深部体温を適切に管理できれば、どこに住んでいても実施しやすいことです。

とはいえ、高地でのパフォーマンスに対する暑熱トレーニングの効果に関するエビデンスは限定的です。特異性が鍵であることに変わりはなく、高地でのレースには高地での順応と可能なら高地でのトレーニングが強く推奨されます。暑い中でのレースも同じで、暑さに適応し暑さの中で練習しなければ、最高の力は発揮できないでしょう。

ルーカス・シェール氏はスポーツ科学者(バイロイト大学修士/ノルウェースポーツ科学大学)であり持久系スポーツコーチ。2024年パリ五輪に向けて、ドイツ水泳連盟と共同で世界クラスの中距離・長距離スイマーの高地合宿を科学的に帯同研究しました。

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